最近は医科での入院治療前に口腔ケアの重要性を指摘され、歯科医院へ来院される患者さんも増えてきました。
「入院」ということだけでも大変なことなのに、日頃から定期的に歯科医院でのメインテナンスを受けてない方にとっては、「歯科医院へ行かなければいけないなんて大変だな」と思う方も多いのではないでしょうか?
日常の口腔ケアの重要性はいうまでもありませんが、いざ入院となった際に口腔ケアの重要性は格段に増してきます。
なぜ(入院)手術前の口腔ケアは、特に重要なのでしょう?
特に全身麻酔で手術を受ける方にとって口腔ケアは極めて重要です。
例えば、全身麻酔では口から気管チューブを挿入します。口腔内の管理ができていない細菌が多い状態では、肺に細菌を押し込むことになります。つまり肺炎や気管支炎などを発生させるリスクが生まれるのです。
また化学療法や放射線治療を行う場合は、口腔内の問題を放置したまま治療が開始されると、全身の白血球の減少や抵抗力の低下によって、歯周病の急性化による痛みや腫れだけでなく、歯性感染症に由来する敗血症など全身の感染症を発症することさえあります。このことによって本来予定されている化学療法のスケジュールの変更を余儀なくされることもあります。
さらに、術後は全身の抵抗力が弱っていることもあり、すぐ元気に動ける方は極めて稀です。そんな時に口腔ケアが不十分で口腔内細菌が多い状態であると、術後の手術部位の感染リスクも高まります。
歯科医院へ受診し、「念入り口腔ケア」をしてもらいましょう。
歯科は受診していないが自分ではしっかり磨けていると思い込んでいる方は特に要注意です。自己流の磨き方では歯石がつき、知らず知らずのうちに歯周ポケットが深くなっている可能性があるからです。歯周病が重度になってしまっていると治療にも時間がかかります。
歯周病などで歯が動いていると、気管チューブ挿管時に動いている歯が抜け、誤って飲み込んだり、気管に入ってしまう危険度があります。固定が必要な歯は固定してもらいましょう。
日頃からケアをしていれば歯周病の心配はないかもしれません。ただ、入院前は再度のチェック!が大切です。レントゲン写真撮影を行ってもらい、治療が必要な箇所がないか検査してもらいましょう。
義歯を使用している場合は義歯に不具合がないかチェックしてもらい、入院中の食事に支障がないようにすることも必要です。
口腔内の根尖病巣(根の先端にできた病気)や歯周病などの感染巣を完全に除去することは理想ですが、入院までの時間は限られていることがほとんどです。治療期間や感染源の除去をどのように行うか歯科医院で相談することも重要です。
最も大切なこと
入院先で歯科がある場合は入院先で手術前の口腔内検査と治療や口腔ケアは受けられますが、やはり長年通い慣れた歯科医院で歯科医師や担当歯科衛生士さんに相談したいと考える患者さんが圧倒的に多いです。
手術予定の有無に関わらず、日常から歯科医院へ定期的に通院し、お口の中を健康に保っておくよう心がけることで万が一の事態にも慌てずにすみます。
また、今は「問題ないから…」と治療を先送りしてしまっている方は、早めの治療を今一度考えてもらえたらと思います。
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