「長年治療を繰り返しているが定期的なメインテナンスはしていない」という患者さんはいらっしゃいます。欠損をそのまま放置していたり、あるいは抜歯しなければならない歯を放置していることによって咬合が変化してしまっていたり。
長年かけて、壊れてきた口腔内の環境を元に戻すには一瞬では戻らなく、治療の時間もかかってきます。
患者さんによっては、「もう歳だからとにかく問題のところだけでいい」「治療が長くなることは面倒だから嫌だわ」時によってはそんな言葉をおっしゃいます。
しかし歯科医師側からすると臨床歴が長くなればなるほど、経験してきた症例数も治療数も圧倒的に増えてくるからこそ、現在の口腔内の状態から未来を想像することができるようになります。そこに患者さんの全身状態が悪化した場合は、口腔内の環境悪化スピードは早まります。
では治療計画を立てるまでにどのようなことを行うのか?説明して行きたいと思います。
基礎資料の収集 問題点の列記
歯科界において、世界の桑田正博先生が 生前おっしゃっていた言葉の中に「何故の追及」があります。この言葉を、歯科治療の初診の患者さんが来院された場合の臨床現場に置き換えてみましょう。
例えば痛みがあって初診で来院された患者さんには、まず第一に痛みを取る治療つまり主訴の改善を行う。次に考えるべきことは何故患者さんの口腔内はこうなったのか?ということです。
何故カリエスができたのか?何故痛くなったのか?なぜクラウンが脱離したのか?何故咬合に問題が生じているのか?などなど・・・
初診時の患者さんの口腔内は、年数をかけて変化し、現在に至っています。ならば、どういうことが起きどういう変化があらわれ現在に至ったのかを知り、本来の機能すべき口腔内に戻していく必要があります。
診査
一言に診査といってもそれは多岐にわたります。
問診・視診・触診(口腔内外)・歯列模型による咬合器上での咬合診査・歯周組織診査・口腔内写真診査・X線診査など、それぞれが正確なスキルを要します。
例えば口腔内写真にしても、経過をしっかり追っていくためには規格化された写真撮影が必要です。
咬合診査にしても生体の噛み合わせの状態を正確に咬合器にトランスファーするための、正確なCR. Bite採得が必須となります。
歯周組織診査は、単なる歯周病の問題の把握だけでなく、咬合起因で歯槽骨が失われることもあるため、歯槽骨欠損を確認するための正確なプロービングが必要になる。などなど・・・
診断
診査が行われて初めて、患者さんの口腔内に何が起こっているのかという、問題点が浮かび上がり、その患者さんの診断ができるのです。
そしてその問題点を解決し、失われてきた機能をどのように回復していくのかを治療計画として立案できます。
特に全顎的な治療の必要性が考えられる場合は、様々な問題点を列記し総合的な順序立てた治療のための総合的な診断が重要となります。
診断用ワックスアップを行いどのように口腔内を機能的に改善していくかを診断していきます。
順序立てた治療計画書の立案
集めた基礎資料をもとに総合診断治療計画を立案する。歯科医師の力量や手技に関わらず、最短で最高、最良の治療計画を先ず立案し、初めて患者さんに提示できます。
この一連の流れはとてもシンプルで簡単であるように思えますが、今後の具体的な治療を大きく左右する、とても重要で奥が深いプロセスと言えます。
だからこそ、診査診断のスキル取得はとても重要であり、大切な作業と言えます。