【伝統が動く】人力で山を揚げる!那須烏山「山あげ祭」460年の迫力舞台

Note: This article is written in Japanese. English summary is provided at the end.

町が舞台に変わる—烏山の夏にだけ現れる、移動式野外歌舞伎

「歌舞伎なんて難しそう」「観光地の小さなお祭りでしょ?」
そんな先入観がある方にこそ、見てほしいのが**栃木県那須烏山(なすからすやま)**で行われる「山あげ祭」です。

このお祭りは、460年以上の歴史を持つ移動式の野外舞台芸能で、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。
そして何より、町の若衆たちが人力で舞台を組み立て、山を揚げて背景を作り替えるという驚きの仕組み。

訪れて初めて、「こんな祭りが日本にあったのか」と気づかされます。


「山あげ祭」とは何か?──祭りの成り立ちと魅力

山あげ祭は、永禄3年(1560年)、当時の烏山城主・那須資胤(なすすけたね)が、疫病退散・五穀豊穣・天下泰平を願い、「牛頭天王(ごずてんのう)」を勧請したのが起源とされています。

江戸時代に流行していた常磐津の舞踊が奉納の余興として加わったことで、現在のような移動式の歌舞伎舞台へと発展しました。


山あげの“山”とは?

「山あげ」と聞いて想像がつかない方も多いでしょう。
ここでいう“山”とは、竹を組んだ骨組みに烏山和紙を幾重にも貼り、山水画が描かれた背景装置のこと。

山あげの山は竹を組んだ木枠に烏山特産の烏山和紙を幾重にも貼ってその上に山水を書いた「はりか山」のことで、この山を人力で揚げることから山あげ祭りと呼ばれます。

人力で持ち上げて組み立て、その場に屋外の舞台をつくりあげます。
この背景が舞台にリアリティを与え、作品の世界観を際立たせるのです。


2025年の当番町は泉町!演目「将門」と「蛇姫様」

山あげ祭は町内6つの地区で輪番制となっており、2025年は泉町が担当。

今回管理人が観たのは「将門」と「蛇姫様」の二演目。
「将門」は子供歌舞伎で、小学6年生の堂々たる口上が印象的でした。

演目の合間には、拍子木と笛の合図で山が切り替えられ、背景がガラッと変化します。
その仕掛けを支えるのが、若衆たちの力と動きです。


若衆たちが支える、誇り高き祭り

「若衆」とは、八雲神社の宮座に所属し、舞台の設営や運営を担う町の若者たちのこと。
この若衆には昔ながらの“しきたり”と“美学”が今なお息づいています。

若衆の心得(一部紹介):

  • 世話人(上役)と直接話してはならない
  • 上からの言葉には素直に従い、仲間と協力して動く
  • 物事は正直に。悪に加担せず、人には情けを
  • 根性を持て。他町には絶対に負けるな!

(公式ガイドブックより)

かつては長男しか若衆になれないという制限もありましたが、今では門戸も広がり、多くの若者たちが参加しています。

この「伝統と誇り」を背負う姿こそ、祭りのもう一つの見どころかもしれません。


烏山の町の魅力と背景文化

祭りの舞台となる烏山の町は、山に囲まれ、清流・那珂川が流れる風光明媚な土地
夏には川沿いの「ヤナ」で鮎料理を楽しむことができ、烏山特産の「和紙文化」も健在です。

観光地化されすぎていない、素朴であたたかい町の空気が、この祭りをより特別なものにしています。


まとめ:こんな祭り、見たことない!

那須烏山の山あげ祭は、単なる伝統行事ではありません。
それは「町の人々の手でつくられる、本気の舞台芸術」。

人が動かし、山が動き、舞台が生まれる——
そんな生きた文化が、いまも呼吸している祭りです。

あなたもぜひ一度、この熱気を体感してみてください。

“Yama-age Matsuri” — The Traditional Outdoor Kabuki Stage You’ve Never Heard Of

Nestled in the mountains of Nasu-Karasuyama, Tochigi Prefecture, Yama-age Matsuri is a spectacular outdoor performing arts festival with over 460 years of history. Designated as an Important Intangible Folk Cultural Property of Japan, the festival features mobile Kabuki stages built and operated entirely by local youth.

The term “yama-age” refers to the large scenic backdrops—made of bamboo frames and traditional Karasuyama washi paper—raised by hand to form a dramatic stage in the open air. These are swiftly changed between performances, turning the town itself into a dynamic theater.

Each year, a different neighborhood takes charge of the festival. In 2025, Izumicho is the lead town. Highlights include children performing Kabuki, synchronized background changes with traditional music cues, and the powerful teamwork of the wakashu (young men’s group), who follow time-honored codes of conduct.

Although the town is slightly remote, surrounded by mountains and rivers, the unique blend of traditional culture, nature, and community spirit makes it well worth the journey.

If you’re looking for a hidden cultural gem beyond the typical summer festivals in Japan, Yama-age Matsuri is an unforgettable experience waiting to be discovered.