Gujo Odori: An Unchanging Dance in an Ever-Changing Town
Note: This article is written in Japanese. English summary is provided at the end.
郡上おどりとは—町全体が舞台になる踊り
岐阜県郡上市で開催される郡上おどりは、約30夜にわたって行われる盛大な縁日おどりで夏の風物詩です。踊りの舞台は町の中心にある広場ではなく、細い路地や石畳の通り。郡上八幡の町全体が舞台となり、誰でもふらりと輪に加わることができます。
縁日踊りの由来 縁日とはある神様や仏様などまた何らかの縁があるものの祭礼や供養が毎年定例的に催される日のことである。そしてその催事が賑やかに盛大に行われるように、踊りを立てて催すのが縁日踊りである。(引用郡上おどり、郡上おどり保存会)
なかでも「徹夜おどり」と呼ばれる期間中8月13日〜8月16日(4日間)は、午後8時から明け方5時頃まで踊りが続くという、他に類を見ない踊りの祭りです。
観光客も地元の人も、浴衣姿で自然に輪に入る—そんな自由で開かれた空気が郡上おどりの魅力です。現在はユネスコ無形文化遺産に登録されています。
徹夜踊りの期間以外は夜の終了時間は10時30分もしくは11時です。お出かけ前に踊りがあるのか確認することをおすすめします。基本的にはお天気で警報が発令されない限り、雨天でも開催されます。



郡上おどりは10種類
郡上おどりは、誰でも自由に参加できる一方で、唄や所作にはきちんとした型があります。踊りの種類は10曲あり、それぞれに決まった振りがあります。
初心者に優しい「かわさき」
若者に人気の飛び跳ねる「春駒」
疲れた後にダラダラしてしまう「やっちく」
掛け声も楽しい「さわぎ」
ねこマネをしたくなる「猫の子」
どれだけ腰を落とせるか!?「郡上甚句」
軽いスクワットの「三百」
右回りか左回りか最初は混乱してしまう「げんげんばらばら」
ついつい踊り方を忘れる「古調かわさき」
その日のおどりの終わりを告げる「まつさか」
踊りの、すべてを覚える必要はありません。多くの人はまわりを見ながら、見よう見まねで踊っていきます。輪への出入りも自由。疲れたら輪を離れて休み、また戻ってくる人も多くいます。
それでも全体として美しく見えるのは、生演奏と下駄の音、そして人々の呼吸が自然に調和しているから。
郡上おどりを覚えてから参加すると楽しさも一際ですよ。
郡上八幡博覧館では郡上おどり実演が行われていますし、夏の間は郡上おどり保存会の方が旧庁舎記念館で踊り講習を開いています。また踊り上手な人には、踊り審査の時間帯に郡上おどり保存会の方から踊り審査合格の木札が渡されお免状がいただけます。
このお免状をいただくために、一生懸命に練習を行なって保存会の人にアピールする時間も楽しいですよ。

↓郡上八幡博覧館での実演です。
まずは形から入ってみるのもいいのでは?
何事もモチベーションは必要。郡上八幡は浴衣が似合う町。
洋服でも楽しいのですが、せっかくなので浴衣が難しくても下駄と手拭いは用意したいところ。
下駄は郡上八幡にある下駄屋さんで自分の好きな鼻緒を選んで作るのがgood!!
手拭いは毎年踊り参加賞として違う絵柄で販売されているので、記念に一枚購入するのもいいですね。もちろん、そのほかにも自分で柄を選んでスクリーン印刷の技術で手拭いを作れるお店もあります。

下駄がそろう!!生演奏が生み出す“今ここ”の熱気
踊り中は、生演奏が町に響きます。三味線や太鼓、唄い手がすべてライブで音をつくり、踊り手と一体になって空間を生み出しています。
録音ではない生の音は、山に囲まれた八幡の風や人の気配と混ざり合いながら、今この瞬間にしかない空気をつくりあげます。どこか懐かしく、でも力強く、聴く人の心と体を自然に動かす音。
この「音の存在感」も、郡上おどりが特別な理由のひとつです。
初めて郡上おどりに参加したときは、輪に入るのも勇気がいりました。見よう見まねで何とか踊ってみるものの、どこかぎこちなく、ただ「参加している」という感覚でした。
けれど、20年も通ううちに、音が聞こえると自然に体が動くようになり、踊りの流れを無理なく感じられるようになりました。もちろんお免状保持者です。(笑)
「踊ることがうまくなった」だけでなく、「踊ることを楽しめ、伝統を愛してやまない自分」になっていた。それが、郡上おどりの不思議な力だと思います。




変わらない町の夜に、また戻ってくる
郡上八幡の町並みは、少しずつ変わっていきます。
新しい店ができたり、古くから愛してやまなかったお店が閉店したり。
それでも、踊りの夜の風景はほとんど変わりません。
提灯のあかり、浴衣姿の人々、下駄の音、石畳に響く唄声。そこには、変わらずにあるものの尊さが静かに流れています。
おなじみの顔に会うのもまた楽しいのです。あれ今年はあの人見かけないなあと思ってみたり。名前などわからなくてもみんな踊りを愛してやまない人の集まり、それが郡上おどりともいえます。おどりで向かい合うと、知らない人にもにっこりしてしまうのでしょうね。
だからこそ、また来年も戻ってきたくなるのです。この音を聴き、この町の空気の中で、ただ踊りたい。
そして郡上おどり好きのみんなにまた会いたい、そんな気持ちにさせてくれるのが郡上おどりの本当の魅力なのかもしれません。
まつさか(その日の踊りの最後の曲)を聞くまで踊り狂う。
郡上おどりを体験したことがない方は、郡上おどりできっとにっこりできますように。



English Summary
Gujo Odori, held in Gujo Hachiman (Gifu Prefecture), is one of Japan’s longest and most participatory summer dance festivals, spanning over 30 nights. Rather than taking place in a single square, the entire historic town becomes the stage—narrow alleys, stone-paved streets, and riverside paths fill with the rhythmic sound of geta clogs and live music.
The festival is open to all. No reservations, no rehearsals. Visitors and locals alike simply join the circle and learn by watching. Among the ten traditional dances, “Kawasaki” is beginner-friendly, while “Harukoma” and “Neko-no-ko” offer more playful or athletic rhythms. The highlight: the four-night “Tetsuya Odori” (All-Night Dance), where dancing continues until 5 AM.
Live performances from a central tower—shamisen, drums, and singers—create a raw and intimate atmosphere. It’s not just a dance; it’s a shared moment that binds people across generations. Over 20 years of attending, the writer reflects on how the unchanged rhythm of Gujo Odori quietly transformed their inner world.
Even as the town evolves, the nightly dance remains unchanged. Returning to Gujo Hachiman each summer feels like returning home—not just to a place, but to a feeling. And perhaps that is the true charm of Gujo Odori.